看護師から見た治験コーディネーターとは?


看護師の皆さん、こんにちは。

ここ数年「治験コーディネーター」という職種が増えているのはご存知ですか?

情報に敏感な医療従事者からも良く聞かれるので、ここで紹介させていただくことにしました。
具体的な仕事内容~どんな人がなるのか?
治験に興味のある方に知っていただけたら幸いです。

さっそくご覧ください。

なぜ治験コーディネーターが増えたのか?

増えた理由は、単純に必要とされ始めたからです。
厚生労働省が今から5年ほど前、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」を策定しました。
策定したのは、患者さんにより多くの新薬をスムーズに安全に提供することが目的でした。
そして今もその計画は進行中です。

国をあげて治験を推奨しているので、とうぜん治験にかかわるスタッフが必要となるわけです。
具体的には、新薬を作る製薬会社と医療業界が必要としています。

この必要とされているスタッフこそが、ズバリ!治験コーディネーターです。
かなり医療色の強い職種なので、同じ医療関係の看護師さんや薬剤師さんにとても有利。
今後働く場所として「注目すべき職種」となること間違いないです。

治験コーディネーターの要約

まず呼び名の意味から説明しますね。
「治験コーディネーター」
短縮して CRC(Clinical Research Coordinatorの略)と呼ばれています。
ネーミングからすると製薬会社に勤める開発側の人間と誤解されがちです。
ですが実際は、病院側の医療スタッフに近い存在です。

日本では一年間に40から50種類の新薬が生まれています。
新薬を生み出すために製薬会社は数百億円規模の予算をかけ、10年以上の長い開発期間を必要とします。
開発の最終段階で試薬対象が、人=患者さんになり、これを治験と言います。
そこで治験コーディネーターの出番となるわけです。

治験コーディネーター(CRC)の役割

治験コーディネーターは以下の3者を取り持つ”橋渡し役”になります。
1. 新薬開発のための試験(治験)を行って欲しい製薬会社
2. その治験を行う機関である病院
3. 治験を行う対象の患者さん

この”橋渡し役”がいない場合、どうなると思いますか?
作った製薬会社の担当者が、飛び込みで病院を訪問した挙句に、寝ている患者さんを起こして「この薬試してみてくれない?」なんて・・・(汗)
ありえないですよね。

薬は人の命を左右します。
飛び込みの営業さんが新発売のジュースを試飲してもらうのとは訳が違います。

そこで治験コーディネーターを仲介した入念なやりとりが必要になります。
・依頼する製薬会社からの連絡や情報の共有。
・実施施設での医師や医療スタッフとの連携及びサポート。
・実施対象となる患者さんへの連絡、説明やケアを行います。

まだあります。

・治験終了後には報告書のサポートや厳しい監査報告の一部を担います。

このように、治験にかかわるチーム全体の連携をスムーズにする役割を果たしています。

具体的な仕事内容について教えて?

治験コーディネーターの仕事として主に3つあります。
1.治験前準備
2.治験開始
3.治験終了後

1~3まで、以下で詳しく説明します。

1.治験前準備

新薬を開発する製薬会社から治験の依頼

治験内容を理解・把握
※治験実施計画書に基づき製薬会社の臨床開発モニターの説明を受けます。

治験の概要、スケジュール、禁止事項についてのミーティング資料作成

実施機関の関係者への治験内容の説明
※関係者:治験責任医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、製薬会社モニター、事務局の担当者

治験に使う検査キットなどの管理

2.治験開始

治験に参加する対象の患者さん抽出(スクリーニング)
※とても重要でストレスのかかる業務です。

同意説明(インフォームドコンセプト)
※どのような治療か、来院のスケジュール、副作用の可能性、内容についてを説明する必要があります。
十分な説明をし、納得した患者さんだけが治験を受けることができます。
この説明のもとになる資料を治験コーディネーターが作成します。

患者さんのケア

来院のスケジュール確認、面談、服薬、残薬管理、有害事象の確認、負担軽減費支払いの確認
※患者さんへの連絡などが主な仕事になります

医師診察に同席、計画書通りか進捗確認
※患者さんの経過観察を行い、副作用に対する不安や相談に応じることが重要な役割の一つです。

治験を実施している医師や薬剤師、検査部門のスタッフと連携し、治験薬の管理や検体の管理の確認

症例報告書(CRF)を作成
※試験コーディネーターの重要な仕事の一つです。
治験を依頼してきた製薬会社へ報告するための症例報告書を作成補助する仕事です。
医学的判断を必要としない治験時の元データからの転記を主に行います。
カルテや、検査結果、投薬の記録、投影した画像、症状についての記録が元データとなります。

製薬会社の臨床開発モニターへ対応
※製薬会社のモニターによる監査への対応を行います。
治験がGCPという厳格な法律に基づいて行われているか、予定通り進捗しているかをチェックすることが目的です。
ごくまれに、治験時に有害な副作用が起きる場合があり、一次対応をするのが治験コーディネーターの仕事となります。

3.治験終了後

全ての症例報告書の作成が完了後、治験終了報告書作成
※治験に参加している患者さんの追跡調査が完了した時点で、治験コーディネーターが治験終了報告書の原案を作成します。
依頼元の製薬会社へ内容を確認してもらい、その後治験責任医師が確認したのちに、その実施機関の長に提出します。
※治験の状況を把握している治験コーディネーターが速やかに正確に治験の結果を報告することが重要な仕事になります

国の監査対応
※一部の実施機関では、国による監査が行われます。
GCPに基づいた治験が正確に遂行されたかどうかチェックするのが目的です。
監査人に対して資料の提示や閲覧を促すサポート役を担います。

新薬の誕生

このように、準備から終了後の作業まで。
1つの薬を作るために、さまざまなプロセスを踏むことがわかりました。
では、続けてどうぞ。

治験コーディネーターの何が面白い?

とにかく幅広い沢山の人材と関われるところですね。
(看護師とは一味違った面白さですね。)

幅広い人材とは、医師、開発者、医療スタッフ・・
さらには、国の監査担当者まで。
多くの地位のある人々と関わります。
治験においては治験コーディネーターが進行を握っているので、彼らをリードして治験を進めたりするわけです。
治験を通じて名の知れた先生たちをリードできたりするところが、治験コーディネーターの醍醐味かもしれませんね。
その他、新薬という「未来の薬」を生み出す仕事に携わっていること自体に、面白さはあるのではないでしょうか。

看護師とどう違うの?

患者さんへの医療行為がほとんどない点です。
確かに患者さんや医師と関わる点は同じですが、治験コーディネーターは独立した職業です。
治験内容の説明、来院スケジュールの連絡や服薬管理、心のケアといったように看護師さんと同様、患者さんと関わる機会は多くあります。
しかし、看護師さんと違って外来や病棟勤務のような医療行為はほとんど行いません。

他にはどこが違う?

上下関係がほとんどなく人間関係もドライなところですね。
実施機関に配置される治験コーディネーターは原則一人です。
看護師さんのように複数で同じ仕事を分担することがないため、一人プレイできるところが異なります。
医師や医療スタッフとのチームプレイはありますが、立場が異なるため人間関係は良い意味でドライだと言えます。

病院にずっといるの?

いいえ、ずっとはいません。
治験コーディネーターは企業に所属している会社員です。
治験を依頼されて実施する機関に治験終了まで配属される仕組みです。
実際は、朝病院に行き、当日の治験スケジュール終了後オフィスに戻り報告書を挙げるといったスケジュールです。
治験は毎回同じ場所で実施されないため、配置する施設が異なる場合があります。
病院に常勤している看護師さんとは違う点です。

すぐになれるの?何か資格は必要なの?

なれます。治験コーディネーターは歴史が浅く、特に資格は必要ありません。
看護師資格も不要です。
極端な話、企業のOLさんが治験コーディネーターになることもできるわけです。

どんな人が向いている?

医療に精通した人の方が有利です。
患者さんの扱いや、病状の管理、服薬の知識など、患者さんに寄り添った業務もあるため、看護師さんや看護師の資格を持った人向けの職業です。

他には?

”コミュニケーションに自信がある、または好きな人”です。
治験コーディネーターは立場の異なる人たちとコミュニケーションをとる仕事とも言えます。
相手が医師だったり、製薬会社のスタッフだったり、患者さんだったりと変わります。
応じて話し方や接し方も変えるスキルが求められます。
男性より女性が多いのも一理あります。

まだある?

”事務仕事が得意な人や好きな人”です。
スケジュールの組み立てや、報告書の作成、ミーティング資料の作成や、データの転記作業など事務仕事が多いのも特徴です。
患者さん対応がメインの看護師さんの仕事と違い、多様性があるため色々な事をやって過ごしたいと思う方にも向いています。

あえてデメリットは?

最大のデメリットは、出張があるところですね。
治験は全国各地で行われているので。
ここが、一か所定住型の看護師さんと大きく違う点ですね。

また、勤めている企業によってはこなした治験の数といったように成果主義なところがあります。
そのため年収にバラつきがある点です。

他に、看護師さんから転職した場合、看護師とは異なる仕事も多いため、経験を全て生かすことができない点です。
逆に、看護師さんに戻ろうと思った場合、治験コーディネーターの経験はあまり役に立たない可能性が高いです。

メリットは?

最大のメリットは資格不要で未経験でも就職できるところです。
つまり、看護師から転職しやすいところですね。

あとは、治験コーディネーターは企業の従業員。
ですから夜勤がなくて、土日完全週休2日制がほとんどです。
不規則で勤務時間の多い環境から抜け出したい方にはお勧めです。

どこで就職できるの?

治験コーディネーターの勤務先として2タイプあります。
1. 依頼される医療機関(病院)を代行して治験を行う「SMO(治験施設支援機関)」に勤めるタイプ
2. 依頼主の製薬会社を代行してサポートする「CRO(医薬品開発受託機関)」に勤めるタイプ
があります。

これからどうなるの?

製薬会社が治験を更にアウトソーシング化していく動きがあります。
治験コーディネーターのニーズも更に高くなり求人も増えていくことが予測されます。

まとめ

治験コーディネーターのイメージはわきましたか?
最近は、外資系の製薬会社の勢力が拡大していて世界的にも競争が激化していっています。
これから更にニーズが高まっていく職業であることは確かです。
残業超過でドロドロとした人間関係に苦しみながら看護師をしている方。
育児で一度リタイヤした方にとっての復職の場所として。
看護師の皆さんの、新たな選択肢になることは間違いないでしょう。

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